店主は妄想族(私小説) その二十一「車の色」


平日の午後に来店された月に一度ほどお見えになる三十代半ばの男性は、私が来店の際の挨拶をすると、こちらに向かう道路の所どころが渋滞していたと返されて、七十年代の国産車のカタログが入っているケースの方に歩まれた。
先日に買入れした自動車書籍を傷みが無いかなどをゆっくりとした動作でレジ机に向かって作業をしていた私が手を止めて顔を上げると、本棚と相対するように通路を挟んで並んでいるケースの一つの前に立ってカタログを出し入れしていた男性が話し掛けてきた。「こちらに来る途中の道路が所々で混んでいたので、どのような色の車が多いのかを思いながら、見ることなく見ていました」
「どんな色の車が、多かったのですか」と私が訊ねると、自動車修理工場で板金塗装の仕事に従事している男性は、圧倒的にホワイトの車が多いですねと答えた。
「白は地味な色であるし、汚れると・・・・・・」と訊き返すと、
「確かに派手ではないし汚れも目立ちますが、それでもホワイトが多いのは、いろんな場に出掛けても抵抗ないからでしょうね。結婚式にも葬式にも白い車で出かけるのは、抵抗がありませんが、赤色の車で結婚式には出かけられますが、葬式に行くのは躊躇いがありますから・・・・・・」と車の色を例えて話された。私はなるほどと頷くと、目の前の書籍の一冊を手に取りダメージの有無を調べ出した。
 自動車書籍の三分の二ほどを調べが終わったところで私は、呟く声を耳にしたので顔を上げると、この車には赤と白のツートンカラーあったのでかとページを開いたままのカタログを手にして呟いている男性を目にした。
「一九七十年代の車には、二色の車はめずらいしかもしせませんね」と話すと、
「ぼくは、仕事柄、カタログを見る時には、その車のボディ色の載っているページを見て最初に見てしまいますが、意外な色があることを知ると、気持ちが高ぶってしまいます」と少し顔を赤くされて言われた。
 ダメージの有無の調べ終えた自動車書籍を椅子の後ろに移して前を向いた私に、七十年代の数部のカタログをレジの机に置かれた男性が、「白色が九の地味な車が赤色が一のカラーでも、配色がどうであれツートンになると、派手な車になりますね」と言われた。
 男性からホワイトとレッドの車の色の話を聞いた私は、余談ですがと言って、先日に見たピンクの色の車の話した。
「休みの日に日常の足であるスーパーカブを走らせていたら、百メートルほど前方にピンク色の乗用車が走って入るのを目にしました。あのようなピンク車を運転している人は、どんな人だろうと、スピードを上げて近づくと、髪の長い女性が運転しているのが分かりました。私は、どんな女性だろうと、よりスピードを上げて近づくと、そのピンクの車が急に停車したので、危なく追突するところでした」と話すと、
「急停車するなんて、無謀な女性ですね」と同情するように男性が言われた。
「ピンクの車は赤信号で停まったのに、私は信号に気づかずにスピードを緩めなかった私の方に・・・・・・」と非がある事を話すと、男性から同情するような表情き消えて、「その女性の顔を見られたのですね」と訊いてきたので、
ぶっかりそうになったショックで、女性の顔を見るのを忘れて、ピンクの車が信号がかわり動き出したのですが、ピンクの車の後ろを走るのをはばかれて横脇に寄ってスピードをあまり出さずに走り出しました」と殊勝気に答えた。
「せっかく、そばまで近づいたのに、女性をの顔を見れなかったのは残念でしたね」と言われたので、
「女性の顔を見なかったのですが、ボディに貼ってあったステッカーは見落としませんでした」と話すと、男性は関心ありげにステッカーに前方注意とか入っていたのですかと訊いてきたので、私はおもむろに、
「ステッカーはピンクの車の後ろのバンパーの右上に貼ってあったのですが、その文句が“キッスおことわり”でした」と話すと、男性はくすっと笑うと、ポケットから財布を出した。
1000円以上のお買い上げの方に差し上げている名車ポストカードを一枚ですがどうぞと手で示すと、男性はよろしですかと言う顔をされて、レジの斜め前にあるポストカードカードのケースに手を伸ばした。
「これから、どちらかにいかれるのですか」と訊ねると、男性はもう一台所有している車のボティに色を塗るためにオートショップに寄って帰ります」と言われて、このポストカードをいただきますとお買い上げになったカタログの入っているシルバーのビニール袋にちょこんと入れた。そして、そのままの姿勢で板金塗装に従事する男性が、机を挟んで立っている私に、
「ご主人さんにとって、ピンクは危険な色になりましたね」との言葉を残して帰って行かれた。

★12月のフェア
<「カタログで見る1990年代の国産・特別仕様車(ワゴン&RV車も含む)」カタログ&カタログ(ベース車)フェア。トヨタ/クレスタ特別仕様車、等。ニッサン/スカイライン誕生40周年記念オーテックバージョン、等。ホンダ/インテグラ特別仕様車、等。マツダ/RX-7ロータリー記念30周年記念限定車、等。
11/30(土)~12/11(水)>

☆1月のフェア(2020年) 
<「カタログで見る1980&90年代の国産二輪車」カタログ&アクセサリー・カタログ フェア。1/4(土)~1/14(火)>  

◆《クルマが懐かしい店「店主のひとり言」》を、店頭で販売中!!くすっと笑えるエピソード集です。著者 松浦正弘 
価格:1000円、 A6判(文庫サイズ)、並装 187ページ
◇通販も承ります。

*つくば市吾妻3-8 友朋堂書店(029-852-3665)でも、販売しています。

店主は妄想族(私小説) その二十「ロードスタークラブ」


私がレジのある机に向かって、名車プレミアム・ポストカードを入れたハカギ・サイズの透明の袋の右上に値を表したラベルを貼っていると、入口のドアがキューと開いて、四十前後の男性が入って来た。
「いらっしゃいませ」とハンドラベーを机上に置きながら私が挨拶をすると、薄手のジャンパーを着た五十前後の男性が軽く頭を下げると、店内に一歩入った所に立って、店内を見回した。
 私は窓越しにロードスターが見えたので、
「今日は天気が良くて、ドライブするには良い日になりましたね」と話し掛けると、
「寒くもなく暑くもなくて、ドライブには適していますが、風か少しありますね」と応えて目星をつけると奥にあるカタログ入りのケースの方に向かわれた。
ラベラーを手にした私は、ポストカードの入った透明の袋に値段のラベルを貼りだすと、マツダと記されたケースの前に立った男性は、カタログに手を伸ばした。
正午の開店時から聞いているFMラジオが二時の時報を知らせるのを耳にした。私は座った状態でラベルの貼り終わったプレミアム・ポストカードを一時的に机の引き出しに仕舞い、何気にケースが並んでいる方に見ると、傍らに数部のカタログを置いて手を休めている男性を目にした。
「ロードスターに乗られて、変わったことがありましたか」と訊ねると、五十代の男性は笑顔をされて、ロードスター・クラブに入会して、そのおかげで仲間が出来ましたと話されて、その後に笑みを消して、
「クラブの中に、自分の所有している物については何も言わないで、他人の有している物はしっこく聞いて来る会員がいて・・・・・・」と笑みを消して言われた。
お客さんの中にある自動車のクラブに入っている人がお見えになりますが、その方も、同じようなことを言う会員がいると言っていましたねと話すと、
「どのクラブにも、他人のコレクションを知りたがるが自分のコレクションを教えたがらない人が居るのですね」と少し安心気な顔をされた。
 私が奥の庫から店頭に出すために五十冊ほどの自動車誌を持ってきて机に向かってダメージがないかを調べていると、十冊ほど終わったところで、男性が数部のカタログをレジのある机上に置かれた。
 私は立ち上がり会計をして、シルバーの袋にカタログを入れて手渡したすと、受け取った男性は、
「今日は長い間探していた、ロ-ドスターの限定車のカタログを含めて数点見つかったので、今日に来て良かったです」とにこにこしながら言われた。
「タイミングが良く、お目当てのものが手に入って、が良かったですね」と、笑みしながら応えると、男性は満面に笑みをされた。帰り際に男性が、
「先ほどの話しですが、他の人のコレクションばかり聞いて自分のコレクションは一切話さないクラブ員ですが、どう思いますか」と訊かれたので、
「ロードスターのクラブですから、もっと”オープン“にして欲しいですね」と答えると、と、「その通りですよ。もっと、心をオープンに・・・」と言い返すと、シルバーの袋を提げた薄手のジャンバーを着た男性はパタンとドアが閉まる音と共に外に出て行かれた。

★12月のフェア
<「カタログで見る1990年代の国産・特別仕様車(ワゴン&RV車も含む)カタログ&カタログ(ベース車)フェア。トヨタ/クレスタ特別仕様車、等。ニッサン/スカイライン誕生10周年記念オーテックバージョン、等。ホンダ/インテグラ特別仕様車、等。マツダ/RX-7ロータリー誕生30周年記念限定車・等の、即時販売です。
11/30(土)~12/11(水)>

☆1月のフェア(2020年)
<「カタログで見る1980&90年代の国産二輪車」カタログ&アクセサリー・カタログ フェア。ホンダ/CBシリーズ、XLシリーズ、スクーター、等。ヤマハ/XJRシリーズ、VXシリーズ、スクーター、等。スズキ/RGシリーズ、DRシリーズ、スクーター、等。カワサキ/ゼファー・シリーズ、KDシリーズ、等。
1/4(土)~1/14(火)>

◆《クルマが懐かしい店「店主のひとり言」》を、店頭にて販売中!!くすっと笑えるエピソード集です。著者 松浦正弘
価格:1000円、 A6判(文庫サイズ)、並製 、187ページ
◇通販も承ります。

*つくば市吾妻3-8 友朋堂書店(029-852-3665)でも、販売しています。

店主は妄想族(私小説) その十九「怠慢」

私は午後八時の閉店後に店舗の二階にある住居に上がり、夕食を含めて小一時間ほどして、シャッターを下ろした一階の横口から店の中に戻った。六つある店内の蛍光灯の一つを点して、レジのある机の椅子に掛けた。シャッター越しに、雨を予感する雷の音が遠く鳴った。レジの斜め前にある電話機の表示する時計が、午後九時七分を示していた。
私は、レジ机の上においた携帯用のパソコンにむかった。来月のフェアの原稿を作るために、パソコンのキーを打ち出した。店の前の市道を往来する車の音が、シャッター越しに聞こえた。店舗の屋根を雨がポッポツと落ちる音がした。しばらくすると、屋根に落ちる雨がプツプツと打つ音になって、やがてバシャバシャと連続して打つ音にかわった。
私はパソコンにむかって二時間ほどした午後十一時すぎに、強く降ったり弱く降ったりして続いた雨は止んで、店内に夜の静けさが戻ってきた。
雨が止んで十分ほどしたら、店の前をトラックが通過する音を聞いた。トラックは後ろが空のせいか荷台が所々にくぼみがある路面をガタンガタンと弾むような音をさせては通って行った。大型らしいトラックの轟くようなエンジン音は、シャッター越しに私の店舗を大きく振動させた。その大型トラックは、店の前から五十メートル先の大通りにある信号につかまったらしく、ブレーキを掛ける音がしたが、その音も大きくて、店の中まで響いてきた。
私は大型のトラックが通って間もなくして、店内のいずれかで、ガザ、ガサ、ガサと、小動物がゆっくりと動くような音を耳にした。パソコンから目を離して店内を見たが、生き物らしいものは見えなかった。
店が在るところの地名が花畑であるように、店内に、コオロギ、カマキリ、トカゲ、カエルなどが入ってくることがあり、私は小動物も入って来ないとは断言できないので・・・・・・。
何の音であるかを確かめるために臆病な私は、机の脇に常に置いてあるレジの後ろの天井近くの窓を開閉するための長さ一メートル二十センチほどの軽いが丈夫な棒を手にした。
恐る恐る私は、店内の中ほどを四坪ほどのカタログの入ったケースが占める七坪ほどの店を時計回りに、北側の壁に備えた自動車雑誌を中心とした本棚、東側の備えた車の書籍を中心の棚、店の正面である窓のある南側、そして、レジ机のある西側と一回りしてレジ机の側に戻ったが、小動物が隠れている気配はなかった。
私は安堵した気持ちでもう一度店内を時計回りに見ていくと、北側に備えた三つある一つの棚の上段に並んでいる自動車雑誌のうちで五、六冊が斜めに傾いているのを見つけ、その段の右端に、三、四センチの空間ができているのを見つけた。
上段に手を伸ばして斜めになっている雑誌を立て掛けて、隣の本棚に移ろうとしたら、立て掛けた雑誌がガサ、ガサ、ガサと音をさせて、ゆっくりと倒れて、先ほどのように傾いた。
先ほどの小動物の動くような音の正体が分かったのと、大型トラックの通過した際に、本棚の上段で倒れそうになっていた雑誌が振動を受けて、徐々に傾いて、小動物の動くような音をたてて傾いたのだと判断した。上段の棚には、傾いた雑誌を立て掛けた後に、一時的に別の雑誌を入れて、レジノ机に戻った。
静かに店内に響いた音の正体が分かってほっとした私は、パソコンにむかったが、もう一度店内に目を凝らすと、北側の本棚も東側の棚のあちらこちらに小さな空間ができているのを目にした。
このところ本棚の補充を怠っていた私は、”明日は、棚の補充を“最優先しよう”と決めて、パソコンにむかった。

★11月のフェア
<「イラスト・カタログで見る国産&外国・自動車(1949-1979年)」カタログ&カタログ(写真も含む)フェア。国産:トヨペット・クラウン、トヨエース、プリンス・グロリア、ダットサン・ブルーバード、三菱ジープ、イスズヒルマン、マツダ1500、東急くろがね、オースチン、オペル、フィアット、シムカ、等。10/26(土)~11/10(日)>

◆当店主が執筆した《クルマが懐かしい店「店主のひとり言」》を、店頭で販売中!! くすっと笑えるエピソード集です。 
価格:1000円 A6判(文庫サイズ) 
並装 187ページ

*つくば市吾妻3-8 友朋堂書店(029-852-3665)でも、販売しています。

店主は妄想族(私小説) その十八「持病」

私はフェア&入荷・等の原稿を作るために、レジ机の上においた携帯用のパソコンにむかってキーを押していた。
午後の二時過ぎに、入口のドアがキューと開いて、二ヶ月に一度ほどお見えになる四十代半ばの長身であるが細身の男性が、背を屈めるようにして入って来られた。
「いらっしゃいませ」と挨拶した私は、いつもは会社帰りの夕方に来られるのに、今日は昼間にいらしたのは・・・と思った。
「こんにちわ」と妙に明るい顔をされて返された四十代の男性は、笑みしながら奥の本棚の方に向かわれた。
私は時々にパソコン越しに顔を上げていたが、フェアの原稿の半分ほど作ったところで手を休めて顔を上げると、三つある真ん中の本棚の前に立ち、棚の中段に並んでいる一九八十年代の自動車誌を取り出しては戻していた男性が、数冊の自動車誌を傍らにおいて、横の本棚に移動するのを目にした。隣の棚に移った男性が棚に手を伸ばして手に取るのでもなく、並べられた自動車誌の背表紙を眺めているように見えた私は、お目当てのものをゲットして余裕で、他の本棚の雑誌を見ているのであろうと思い、
「いつもは夕方にお見えになるのに、今日は昼間にいらっしゃいましたが、如何したのですか?」と訊ねると、
「二週間ほど前に人間ドックによる健診を受けたのですが、その結果が今日に分かるので、有休を利用して病院に行ったのです。こちらには、その帰りに寄ってみました」とレジ机のある方に振り返り笑みしながら言われた。
「どうでしたか?」と私が心配そうに訊ねると、
「大丈夫でした」と笑顔で答えた男性であったが、少し顔を曇らせて、
胃が少し荒れていると伝えられた先生に、
「五、六年前の会社の健診から、レントゲンによる胃の検査の度に、胃の一部に黒い影が写るので、その度に大きな病院で内視鏡検査を受けるように勧められました。しかし、病院での内視鏡の検査の度に、その黒い影は問題ないとのことで・・・・・・。それで、今年は会社の健診を受けずに、健診の中で、胃のレントゲンをしないで直接に内視鏡検査をされる人間ドックを選んだのです。今度も胃について云われたので、今までの健診での胃の検査での経緯を話すと、その先生は、『レントゲンの検査の度に胃に黒い影がでるのは、胃の一部が慢性の胃炎になっていて、そこがレントゲンでは黒い影になるのでする』と話された。ぼくは、慢性の胃炎と分かってから、病気には入らないかもしれませんが、胃炎は、ぼくの持病だと思いました」とひらきなおった口調で話されると、本棚の方に向かれた。
上段の方から雑誌の背表紙をゆっくりと目でおっている男性から目を離して、私はパソコンのキーを押し出した。
私はフェアと入荷の原稿を作り終えたので携帯用のパソコンをとじて、椅子から立ち上がろうとしたら、机上に二冊の自動車誌を男性がおかれた。私は立ち上がったままに会計をして、支払いの終わった自動車誌をシルバーのビニール袋に入れて手渡しすと、受け取ったシルバーの袋を机上に置いて細身の男性が、
「ご主人さんは、持病はありますか?」と訊いてきた。天井を見上げるようにしてから私はおもむろに、
「ありますよ」と答えて、右手を後ろに回してお尻の割れ目を抑える格好をした。
「ああ、痔ですか。あれは痛いらしいですね。一緒に住んでいた弟も痔で、トイレから出てくるたびに顔をゆがめていました」と、弟さんのされた表情をまねるようにして言われた。
「もう、十二年ほど前になるのですが、手術をしたのですが、完全に治っていなくて、寒い冬の日などは、突き刺すような傷みがあり、そんな日はトイレにいくのがためらいますね」と私は困り顔で話した。
「それは、お気の毒です」と言った男性は、次に言おうとしたら、電話が鳴った。私は受話器を取って店名を伝えると、まちがいでしたと謝ると電話が切れた。受話器をおいて先ほどの姿勢になって私に、待っていたように、
「ご主人さん、“まさしく痔病”ですね」と抑えた笑いをして細身の男性が言われた。
「確かに・・・・・・」と私も同調するように笑みすると、男性は大きな笑みをされるとくるりと回り出口に向かわれた。
店主の「ありがとうございました」の声が背後にして、長身の男性は出口のところで少し頭を下げ気味にすると、パタンとドアの閉まる音と共に外に出て行かれた。

★11月のフェア<「イラスト・カタログで見る国産&外国・自動車(1949-1979年)」カタロク&カタログ(写真も含む)フェア。国産:トヨペット・クラウン、トヨエース、プリンス・グロリア、ダットサン・ブルーバード、三菱ジープ、いすずヒルマン、
マツダT1500、東急くろがね、等。外国:オースチン、MG、オペル、フィアット、シムカ、フォード、クライスラー、ダッチ、等。
10/26(土)~11/10(日)

◆当店主が執筆した《クルマが懐かしい店「店主のひとり言」》を、店頭にて販売中!! くすっと笑えるエピソード集です。 
価格:1000円 A6判(文庫サイズ)
並製 187ページ 

*つくば市吾妻3-8 友朋堂書店(029-852-3665)でも、販売しています。

店主は妄想族(私小説) その十七「小動物」

五月の風が吹く日曜日の午後、柔和な表情がされた青年が来店された。レーシング・グラブ名入りのTシャツを着た背丈がある二十代後半と思われる男性は、奥の三つある本棚のレジの机に一番近い左の棚の下段に揃えているレース・プログラムを、体を屈めるようにして、取り出してはパラパラとめくり戻していた。
この男性は三十分ほど前にお見えになった際に、「東京から筑波サーキットで催されたレースを観戦に来たのですが、この店が車で二十分ほどの所に在るのが分かって、帰る前に寄ってみました」と話された。
「東京から逆の方向にある当店に、わざわざいらしていただき、ありがとうございます」と、私は来店されたことに礼をのべた。
表裏のカバーにダメージがないかのチェックを終えた七十部程の自動車カタログを、机の脇に置いて、いままで脇に置いていた十五冊ほどの自動車ガイドブックを交換するように目の前に置いて、同じように傷みや折れなどが無いかを調べようと机に向かった私に、「サーキットからつくば市に向かってくる途中の道路で、五十メートルほど先でしたが、猫が横切るのを見ました」と少し興奮気味に棚の傍らから話し掛けてきた。
「私も猫が道路を横切るのを見ました。犬も横切るのを見ましたね」と顔を上げて応えると、「こちらでは、猫や犬が道路を横切るのは、珍しくはないのですね」と言われた。
「私は日常の足にスーパーカブを使っているのですが、少し前に研究学園駅の方に用があり、近道をしようと県道から横道に入りしばらく走ると、イタチかモグラのどちらかでしたが、横切るのを目にしました」と話すと、「のどかな光景ですね」と、笑みしながら言われた。「多分イタチであったと思いますが、急にバイクの前を横切ったので、危うく転倒しそうになりました」と硬い表情をして話した。
すると、青年の顔から笑みが消えて、「いくら小さな小動物とはいえ、目の前を急に横切ったら、慌ててハンドル操作を誤ってしまいますね」と、引きった面持ちで言われた。
私は男性の表情を見て、せっかく楽しみに探し物をしている男性を緊張させてしまったなと思い、気持ちを和らげようと、“横切る話”つながりで、「先日のことですが、南から北に向かうために交差点で信号待ちをしていると、東から西の方へ四輪駆動の乗用車がゆっくりと横切るのを見ました。何気にその四駆の乗用車を見ていたら、ボディに貼られたステッカーが、茨城では不適合な文句だと思ったのです」と話して、貼られたステッカーの文句を伝えようとしたら、入口のドアがキューと開いて、大柄な男性が店に入って来た。その男性は店内を見回してから、キャンプ仕様の車を特集した本がないかと訊ねてきた。
私は脳内にその仕様の車を集めた本が頭に浮かんでこなかったが、椅子から立ちあり、店の中ほどに備えた棚の方に向かって関連した雑誌類がないかと見てから、ワゴン車のカタログが積み重ねてある場所からキャンピング仕様のカタログを出して、大柄な男性に見せてみた。
先ほどの話しの途中であった二十代後半の男性は、棚からレース・プログラムを取り出しては出しては見ては戻していた。ワゴン車のキャンピン仕様のカタログをじっくり見ていた男性は、参考になると言われて、そのカタログをお買い求めになると、パタンと閉まるドアの音と共に外に出て行かれた。
キャンピング仕様のカタログをお買い求めになった男性が帰られると、二十代後半の男性はレース・プログラムに伸ばす手を止めると、レジのある机の方に向かれて、「キャンピングカーの興味のある方いらっしゃるのですね」と言ってから、交差点を横切った四駆車のボディに貼られていたステッカーのも文句について、興味あり気に訊いてきた。
「ステッカーの文句は、“熊の出没に、注意!!”、でした」と私がおもむろに話すと、「茨城では、熊が出たのは、聞いたことはありませんね」と言って、男性はくすっと笑った。

★10月のフェア
<「出版物で見る1960&70年代のF1グランプリ&インディ500」マガジン&ブック フェア。オートスポーツ誌、カーマガジン誌、(ノーベル書房)栄光への爆走、等。
9/28(土)~10/6(日)>

◆当店主が執筆した《クルマが懐かしい店「店主のひとり言」》を、当店頭で販売中!! くすっと笑えるエピソード集です。 価格:1000円 A6判(文庫サイズ) 並装 187ページ

*つくば市吾妻3-8 友朋堂書店(029-852-3665)でも、販売しています。