店主は妄想族(私小説) その十三「醍醐味」おかげさまで開店22周年!!

平日の午後、私は正面の窓を背にして奥の本棚の隙間のある場所に昭和五十年代の自動車誌を補充していると、入り口のドアがキューと開いたので、「いらっしゃいませ」と振り返り様に挨拶をすると、「こんちわ」と返して水戸から月に一度か二度ほど来られる四十代の男性が来店された。私は木造りの台を使って棚の本を補っていたので、床に降りると台を手にしてレジのある机の方に戻った。黒縁メガネの男性は、台が取り除かれると、通るところを挟んで本棚と相対するように並ぶ中の一つ、トラックやバンのカタログ入りのケースの前に立った。補充ために用意した二十冊ほどの自動車誌を一時的に座っている椅子の後ろにおいて、レジ机の右斜め後ろに積んでおいたダメージがないかのチェックの終わらない三、四十冊の自動車書籍から、十冊ほど目の前におき上から順に傷みがないか折れがないかを確かめていった。先ほどから百部ほど入っているケースの後ろから手を伸ばし、順にカタログを引き上げては戻していたメガネをかけた男性が、「タクシーのカタログは、切れていますね」と声高に言われた。その声に私は手を止めて顔を上げると、「教習車のカタログは営業車よりは人気がないので有ると思ったのですが、これも切れていますね」と、今度は低い声で言われた。私は残念そうにしているのを見て、気持ちが少しでも治まるように、「他のお客さんでも、営業車や教習車のカタログを求めて来られますが、ほとんどが手に入れられずに、お帰りなります。バンや小型のトラックは、個人事業者なども使用する車でしたから一般のディーラーで扱っていましたので、これらのカタログは販売店に行けば手に入りました。ですから、店頭で買入の際にも頻繁に入ってきます。しかし、タクシーや教習車のカタログは事業所単位で購入する車なので、一般の人には販売する車ではなかったので、扱っている店が限られていました。それらので度々の買入れにも、これにのカタログは滅多に入ってくることはありません」と話して、「入手できないのは、お一人だけではありませんよ」と話した。「そうですよね」とご自分も分かっているような口調で男性は応えた。私は他の営業車のカタログを求めている人と落胆の度合いが大きいように見えたので、「タクシーのカタログに固執しているようですが、何かあるのですか」とやんわり訊ねると、くすんでいた表情がにわかに明るくなって、「実は、タクシーを所有しています」と話してきた。私は思わず「実車のタクシーですか」と確かめると、「そうです」と応えて、ニヤリとするや、「あるタクシーの営業所の払い下げですが、その時の条件としては、ボディに描かれた会社名を消すこと、屋根についている行灯を外すこと、等の幾つかの条件を受け入れることで所有することができたのですよ」と、弾むような口調で話された。
私が感心すると、四十代の男性は、「営業車がなくても、軽自動車のバンも好きですから」と明るい声で言い、一段下の軽の商用車のケースに体を屈めた。しばらくすると、レジの机に軽のバンのカタロクを三部程お持ちになった。私は立ち上がり会計を終えると、お買い上げになったカタログをシルバーのビニール袋に入れて渡す際に、「訊いて、いいですか」と言ってみると、「いいですよ」と男性か返されたので、「営業車を有したことで、何かエピソードはありませんか」と訊いてみると、考えることもなくすぐに黒縁メガネの男性は、「先月にある旧車のイベントに出掛けるために、家を出たのですが、数キロ走ったところの信号で止まっていたら、年配の女性がウィンドーのガラスをコツコツとたたいたのです。僕は左の窓を自動で開けると、その女性が唐突に『駅まで、いっておくれ』と言われたのです」と嬉しそうな顔をして話された。「その女性は、本物のタクシーと思ったのですね」とその光景を頭に描きながら言い、「趣味の車なのに、そんなことをされたら、困ったものですね」と同情すると、「とんでもない」と言うような表情をされて男性は、「趣味の車としてタクシーを所有する僕には、それが“醍醐味”なのです」と言われた。
                     
★9月のフェア<「カタログで見る、1970&80年代の国産・高級セダン・カー」カタログ&アクセサリー・カタログ フェア。トヨタ/クラウン、マークⅡ、等。日産/セドリック、ローレル、等。マツダ/ルーチェ、等。三菱/ギャランΣ、等。8/31(土)~9/8(日)

◆当店主が執筆した《クルマが懐かしい店「店主のひとり言」》を、当店頭にて販売中!!くすっと笑えるエピソード集です。価格:1000円、A6判(文庫サイズ)、並製187ページ、2014年2月発行。 
 
*つくば市吾妻3-8 友朋堂書店(029-852-3665)でも、販売しております。

*8/13(火)、8/14(水)、8/15(木)、8/16(金 )は、夏休みとさせていただきます。

店主は妄想族(私小説)その十二「つくばうどん」


 千葉の佐倉市からお見えになったお客さんが、お目当てのカタログが見つかり、その代金を支払いを終えると、「筑波で、美味しいものが食べれるお店を、知りませんか」と唐突に言われた。会計を終えて椅子に掛けようとしたが立ったままで「出不精なもので、あまり出かけることはありませんが・・・」と前置きして、「麺類は、お好きですか」と訊いて、三十代半ばの男性が、「ええ、好きですよ」と笑みしながら答えた。私はそれではと思い、筑波山の中腹にあるホテルにお勤めの方から教えていただいた”つくばうどん”の食べられるところを教えた。「つくばうどんって・・・?」と訊ねられた私は、ホテルマンである方のお話では、茨城の銘柄である鶏を使ったツクネや、地元のシイタケやゴボウなどの食材をふんだんに用いたのが”つくばうどん”であるそうですと伝えると、「ご主人さんは、食べられましたか?」と男性は不安げに訊かれた。私は「もちろんです」と答えて、「それも、二週も連続して行きました」と前置きして、お話したのです。
 月が替わって最初の定休日の木曜、ホテルに勤務する方から、そこの食事処の新メニューであることを含めて、その場所も教えていただいた私は、筑波山中腹にある湯屋を目指して、私の愛車であるスーパーカブを走らせたのです。カブのハンドルを握る私は、店の前の通りから大通りに出て、筑波山の方に向かって走り、国道125線との交差する十字路を直進し丁字路にぶっかると右に折れて、その片側一車線の道路は真っすぐに走って筑波山の上まで観光道路につながる道路に・・・。私のスーパーカブは、ボディ全体が白で、荷台に金属の黒い箱が付いていて、ちょっと見は、交番の巡査が乗っているバイクに見えるのです。面白いことに、山の上る途中にゆっくり走る小型乗用車に追いつくと、その年配の運転手がバックミラーを見るなり、シートベルトをしているかを確かめる仕草が、後ろについて走るバイクの私からは見えたのです。坂を十分ほど上がると筑波神社の鳥居が見えて、道路は二手に分かれて、私はロープウェイ乗り場に向かう右側のコースをとり、小型乗用車は左側に分かれて行ったのです。つくばうどんが新メューに加わった食事処のある湯屋は、神社の鳥居から五分ほど走った先の大きくカーブして直ぐの右側の道路沿いに在って、道路を挟んで左側に建つホテルの有する・・・・・・。つくばうどんを食べることのできる食事処は湯屋の奥の大広間に在り、私はカブを駐輪場に停めて、のれんをくぐり、大広間の座敷にあがると窓際の席に座った。もちろん、つくばうどんを注文して十分ほど待つと、目の前に・・・。腰のあるうどんに、やわらかいつくね、歯ごたえのある豚のバラ肉、ゴボウ、シイタケ、だしの効いた汁は残さずに・・・。窓越しに見える筑波山の頂まで景観も相まって、私は湯屋の食事処で食と景色の二重の満足感を味わうことが出来ました。
私のエピソードを含めた話が終わると、黙って聞いていてた男性は、「つくばうどんを、食べたくなりました」と応じたのです。が、「僕はお気に入りの店があっても、わずか一週間後に同じ店に行くことはありませんが・・・」と拒むようなことを云われた。「実は、最初の週の木曜日に行ったのですが、うっかりして財布を持たずに出でしまい、湯屋の入口を前にしてやむなく帰って、次の週の木曜に出掛けて、つくばうどんを食したのです」と照れくさそうに話すと、三十代の男性は「二週に連続して行かれたのは、そういうことなのですね」と声のトーンを落として云われた。ほんの少し間があってから、「ご主人さんの食レポートがとても良かったので、筑波山の・・・」と声のトーンを上がった声で云われた。
 私はお買い上げのカタログを入ったシルバーのビニール袋を手渡しすると、男性はシルバーの袋を手にして、「これから筑波山に向かって、湯屋の食事処に行ってみます」と笑みしながら出口に向かわれ、ドアを半ば開いたまま顔だけを机の方に向いて、「財布の他にもキャシュカードも持っていますので・・・」とやんわりと言うと、外に出て行かれた。

★8月のフェア<「カタログで見る、国産・オフロード二輪車(1965年~)」カタログ&アクセサリー・カタログ フェア。8/3(土)~8/12(月)>

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店主は妄想族(私小説) その十一「定価より」  

さわやかな風が心地よい五月上旬、入口のドアがゆっくりと開いて、年配の男性がお見えになられた。「いらっしゃいませ」と挨拶すると、店内に一歩入った所でちょこんと頭を下げて応えた六十代半ばと思われる男性は、店内を見まわして、店の中ほどにまとめた自動車カタログの入ったケースには目をくれずに、壁際に備えた本棚に目線を当てていた。私は(初めての方だな)と思いながら、(カタログには関心はお持ちでないな)と思った。ゆっくりと店内を見回した後で見定めたように男性は奥に進まれて、三つある左端の本棚の上段に並ぶ自動車誌に手を伸ばされた。
 髪に白いものが混じる男性は、昭和三十年代から四十年代の自動車誌を棚から取り出してはページをめくり戻していた。私はレジのある机に向かって店頭に出すまえのカタログを傷みや折れなどが無いかをチェックしながら時々に棚の方を見ていたが、六十代の男性が手を休めているのを目にして、「お探しの物がありましたら、お探ししますよ」と声を掛けてみると、机の方を向かれた男性は「大丈夫ですよ」と応えてから、店内の中ほどを占めるカタログ入りのケースに目をやった。「雑誌好きの僕には、店内の半分以上の場所を、カタログが占めているのが異様に感じます」と話して、「このようなカタログは、どのようにして集めらて来られるのですか」とそのものよりもカタログの入手先の方が関心ありげに訊いて来られた。私はおもむろに「雑誌を含めてカタログも、当店頭に売りに来られる方がいらっいます。お持ちになるもの中に特にカタログに関しては、とても数の少ない物もあり、そのような珍しいカタログは、高額で買うこともあります」と応えると、「ええっ」と声を上げて男性は驚かれた。私はその驚きように、「どうされました」と思わず訊いてしまったが、丁度に電話が鳴って五分ほどの応対後に受話器を置いて棚の方を見ると、男性は先ほど同様に自動車誌を上段から取り出しは戻していた。
 カタログにダメージがないかのチェックを終えたころに、白い髪が混じる男性は昭和三十年代の自動車誌を三冊ほどお持ちになってレジの机に置かれた。会計をしようと立ち上がった私は机の上に重ねるようにおかれた自動車誌を目にして、「お目当てのものが有って、良かったですね」と笑みしながら言うと、「実はこれらは、小学生の頃に買っていた自動車誌で、当時は定価が三百円で、小学生の時のお小遣いが三百円の頃でした。小五のぼくはお菓子を我慢して、この雑誌を買っていました」と懐かしそうに話して、「そんなにしてまで買い続けた雑誌を、四十半ばに止む得ずに全冊を手離してしまったんです」と悔しそうに話されて、「それで今になって、小学生の頃に買っていた雑誌の記事が読みたくなって探していたところ、知人からこの店を教えてもらい、今日に時間の都合をつけて埼玉の本庄から来ました」と少し声高に話された。
 支払いを終えた男性にお買い上げになった自動車誌をシルバーのビニール袋に入れて手渡した後に、「カタログを高く買うというような話をした時に、驚かれたのは、どうしてですか」とあらためて私は訊ねてみた。男性はシルバーの袋を提げながら「ディーラーに行けばもらえた自動車のカタログを、この店ではお金を出して買っているのに、ビックリしたのです。それも、元はタダの物なのに貴重なモノもあると言って、それらには高いお金で出していることに・・・。」と真顔で答えたのでした。私は苦笑してから「今となっては手に入らないものですから、確かにタダでもらえたカタログですが、当店に来られる方は欲しいものであれは、お金を出してお買いになっていきます」とありのままに話した。そんなことって有りかなという顔を男性はされたが、それ以上はカタログについて話してこなかったので、私もそれ以上は話しませんでした。帰り際に男性が、「この時代の雑誌を揃えている店は、貴重ですよ」と言われて、私が、「ありがとうございます」と述べると、六十代の男性はもう一度奥の棚の方を見られてから出口の方に向かわれた。ドアの近くのインフォメーション・ボードを目を止めてから、定価三百円を当店で売価千五百円の自動車誌の入ったシルバーの袋を大事に抱えるようにしながら、外に出で行かれた。黒い髪に白いものが混じる男性の運転する車が駐車場から出て行くのを窓越しに見送りながら欲する気持ちがあれば、ディーラーでもらえたモノでも、”定価より”高くても、私自身も購入していると明言できるのです。
                       
★8月のフェア<「カタログで見る、国産・オフロード二輪車(1965年~)」カタログ&アクセサリー・カタログ フェア。 等。8/3(土)~8/12(月)>

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店主は妄想族(私小説) その十「赤丸のしるし」 

 レジ机に向かい店頭に出すためのカタログを透明のビニール袋に入れていた私は、店の前の駐車場で車のドアが閉まる音を耳にしたので机越しに窓の外をうかがうと、入口に年配の男性が立つのが見えた。ご来店の挨拶をするためにドアが開くのを待ち構えたが、何度か来店されて見覚えのある年配の男性は、入口の前に立っているが一向に店の中に入って来なかった。私は(どうしたのかな)と思って立ちあがってドアの方に近づくと、店舗の入り口と横並びの二階の住居の玄関戸のインターホーンを押していた。「こちらが、入口です」とドアを半開きにして顔だけ出して伝えると、「こっちだったな」と男性は照れ笑いをしながら、大きくドアを開いて店の中に入って来られた。
 七坪ほどの店の奥の壁際に備えた三つある本棚の真ん中に立って六十代の男性は、棚の上段から中段にかけて並ぶ昭和三十年代から四十年代の自動車誌を取り出してはページを丁寧にめくり戻していた。私はカタログの入れ終えた透明のビニール袋の表の右上に、すでに手書きで値段を書き終えた小さなラベルを貼ろうとして、目の前においた六十部ほどの一番上のカタログを手にしたが、先ほどの年配の男性との入口でのやり取りが頭に現れて、この男性が三度目に来店された時を思いだしてしまった。その時のやり取りとは、「一点が百円値の当店のポイントカードをお持ちですか」と三冊ほどの自動車誌をレジにお持ちになった際に男性に訊ねると、「あぁ、カードね、持っているよ」と応えて、いろんなカードが混じっている財布から一枚取り出して「はい」と渡された。当店の発行するカードではなくて別のお店のカードだったので私は、「このような表示のカードです」とレジの横から取り出したポイントカードを見せると、「あぁ、そうか」とひっこめ、当店のカードを出されたのです。カタログの入った三十部ほどの透明の袋に値段のラベルを貼り終えたところで、男性が昭和三十九年代のモーターファン誌とモーターマガジン誌の二冊をレジの机にお持ちになった。私は会計するために立ち上がり一冊づつ手にして、(モーターマガジン誌の方は、同じ雑誌でカードのポイントが使える赤丸印もあったはず)と思いながら、「一点が百円値のポイントカードをお持ちですか?」と訊ねると、「あぁ、持っているよ」と応えて、ポケットから出した財布から当店のポイントカードを出してくれた。カードの裏に七個のハンコが押されいるのを確かめてから私は、「この時点で七百円分と交換できます。確か、こちらの一冊はポイントの使えるのがあったはずですが、それになされば、七百円を引いた代金になりますよ」と話して、「どういたしますか?」と訊いてみた。すると六十代の男性は、「先ほど見ていた時に、同じ雑誌であったが、値段の横に赤丸しるしが付いていたので取らなかったが、ポイントが使えるなら、そちらにするよ」と応えた。男性が赤丸しるしに代えると言われたので私は、赤丸のない値段の雑誌を本棚に戻して、赤丸の印の付いたラベルの貼った雑誌と手にして机に戻り、二冊分より一冊はポイント分を引いた代金をいただいた。
 お買い上げのお品の入ったシルバー色のビニール袋を男性に手渡してから、「お好きなポストカードがありましたら、一枚どうぞ」と千円以上をお買いになられた方にプレゼントしているポストカードをすすめると、「あぁ、そうだな」と応えて、レジの前にある仕切りのあるカード・ケースに手を伸ばされた。「これから、どちらかに行かれるのですか」と椅子に掛けずに私が訊ねると、「このまま、どこも寄らずに、帰ります」とあっさりと応えて、一枚を手に取ると「これ、いただきます」と言って、シルバーの袋に滑り込ませた。「ありがとうございました」と礼を言うと、くるりと向きを変えて出口の方に向かいドアを半ば開いたままにしてレジ机の方を向かれ、「値段に赤丸のしるしの付いている品は、”要注意のしるし”と思って、手を出さなかったんだよ」と苦笑しながら言われた。「大丈夫ですよ。赤丸のしるしは、”お得のしるし”です」と応えると、笑みされた男性は、「ありがとう」という言葉を店内に残して、ドアが閉まる直後に外に出て行かれた。

★7月のフェア<「自動車誌で見る、1970年代の国産乗用車(増刊・別冊も含む)」マガジン&マガジン フェア。モーターマガジン誌、モーターファン誌、等。6/29(土)~7/7(日)>

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店主は妄想族(私小説) その十「まさしく掘り出し物」 


 平日の午後、一週間前に電話での問い合わせがあり、在庫があれば通販も可能と言って電話を切った別々の相手から、今日に振り込みの通知を確認した私は、二人に送るための荷造りを始めようとしていたら、配達の業務の途中と思われる胸に飲料メーカーのロゴ入りの作業着を着た二人連れが店の中に入って来られた。私は先に姿を見せた小太りの男性は何度かご来店され三十代半ばと話されたカタログを収集されている人であり、後ろについて来店された四十代と思われる細身の男性は、初めての人と思いながら、「いらっしゃいませ」とそれぞれに挨拶すると、三十代の男性は「どうも」と言って軽く頭を下げて四十代の男性は無反応で店内を見回した。入り口のドアが開いて店に入ってくる際に、小太りの男性が後ろを向くようにして「この店は、掘り出し物あるですよ」と連れの男性に小声でささやくのを、私は耳にした。
 レジのある机に向かって一つ目の荷造りしながら私は、以前に三十代の男性は同じ歳ぐらいの仲間と三人連れで来られたのを思い出しして、その日はロゴ入りの作業着ではなかった小太りの男性が、ケースからお買い求めになるためのカタログを見えるところに出したまま他のケース内のカタログを見ているうちに、もう一人の同じ歳と思われる男性が出したままのカタログを中身を見るや素早く手にしてレジの方にお持ちになったのです。その事を思い出すと、カタログのケースを前で啞然としている小太りの男性の顔を思い出したのです。同じ仲間は、趣味が合うのは良いが欲しいものは同じなのは困るのか、それ以来に小太りの男性が三人連れで来られたのを、私は見たことがない。
 一つ目の荷造りが終わり二つ目にとりかかろうとして何気に顔を上げると、奥の本棚の前に五十センチほどの高さに積み重ねた二つの雑誌の山の一つを、小太りの男性は表紙を見ながら横にはねているのを目にした。傍らに立っている細身の男性は、何もすることなく年下の男性の動作を黙って見ていた。二つ目の荷造りを終えて顔を上げた私は、雑誌の山を元の場所に戻し終え立ち上がり際に、がっくりと肩を落としていた姿を目にして、「お探しの物がありましたら、探しますよ」と声を掛けた。「九十年代後半に発売した丸ごと一冊がシビック特集の雑誌を探してるのですが、一つの車種が丸ごと一冊の雑誌がこれだけあるので、期待して見たのですが、残念ながらありませんでした」と悲しそうな声で言われた。「そのシリーズでしたら、その横の本棚の一番下の段にもありますよ。一番下の段も本が並んでいるのですが、その前にモータースポーツ誌の山で隠れてしまって、ページ数のある背表紙が厚いある書籍は下の段からうまく取り出せないことで、そのシリーズのようなピン止になっている背表紙の薄い雑誌が入っています」と話すと、今まで気落ちしていた小太りの男性の顔がにわかに明るくなった。「モータースポーツの雑誌は、横の小さな山になっているドレスアップ本シリーズの上に積み上げて構いませんよ」と気づかうように言うと、小太りの男性はスポーツ誌を手早く横にはねていきドレスアップ本の上に高く積み上げると、高さが四十五センチほどの下の段の棚の奥から六十冊ほどの丸ごと一冊シリーズの一番上の表紙の一片が見えた。三十代の男性は手を伸ばすや五、六冊づつ引っ張り出して、見る見るうちに棚の前は小山が出来た。四十代の男性は、三十代の男性の傍らに立ち、取り出すのを見ていた。
 二つの荷造りを終え集荷ための電話を郵便局にして、依頼の電話を終えると私は、椅子に掛けて店頭に出す前にダメージがないかのチェックするために机の後ろに重ねたカタログうちの数部を手元に持ってきた。シビックのまるごと一冊の他にこのシリーズの別の車種を三冊ほどお持ちになった小太りの男性は、それらをレジ机に置かれた。「お目当てのものが有りましたね」と立ち上がりながら話すと、「今日のお目当ての一冊が在りました。もう一冊は、以前から探していた物で、なかなか見つからなかったのですが、ここで見つけることが出来ました」と男性は弾む声で言われた。「大収穫でしたね」と私が応じると、喜びを抑えきれない顔をしながら、ポケットから財布を出された。「ありがとうございました」と礼を云うと、にっこりとされて出口の方に向かわれた。先に立って外に出で行く三十代の男性に、後ろについた四十代の男性が「まさしく掘り出し物だな」と、ドアの閉まる直後に小声で言われた。私は後ろの男性のささやく声を見逃しはしなかった。
                           
★7月のフェア<「自動車誌で見る、1970年代の国産乗用車(増刊・別冊も含む)」マガジン&マガジン フェア。モーターマガジン誌・モーターファン誌、 等。6/29(土)~7/7(日)>

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